【セミナー実施レポート】「ない」から考える経営のヒント~「ない時代の経営戦略セミナー」を実施しました~

「人がいない」「物価が高い」「資金に余裕がない」——。

多くの事業者がこうした課題に直面する今、狭山市ビジネスサポートセンター(Saya-Biz)では、7月30日に「ない時代の経営戦略セミナー」を開催しました。

当日は、ブランディング、デザイン、そしてパネルディスカッションの3部構成で、「ない」を制約ではなく、新たな価値を生み出すきっかけとして捉える経営戦略についてお伝えしました。今回のブログでは、当日の内容を振り返りながら、これからの経営に役立つヒントをご紹介します。


第1部 ブランディング編

「あるものを見る経営」が、これからの経営戦略

第一部では、宇津木ブランディングアドバイザーが登壇。
ブランディングの視点から、「ない時代」をどう乗り越えていくかについてお話ししました。

人材不足や物価高、資材価格の高騰など、経営資源が限られる今、多くの企業は「足りないもの」に目が向きがちです。
しかし、そのような時代だからこそ重要なのは、「あるものを見る経営」という考え方です。

ここでいう「見る」とは、表面的に確認することではなく、自社が持つ価値を深く見つめ直すこと。

企業には、長年培ってきた技術や商品・サービス、お客様との信頼関係、理念、社員やスタッフなど、すでに多くの経営資源があります。
それらを改めて整理し、自社ならではの価値として言語化することが、これからの経営の出発点になります。

ブランディングとは、お客様にとっての自社の価値を明確にし、「選ばれ続ける理由」を育てていくことです。
限られた経営資源をどこへ集中させるのか。その判断軸をつくることも、ブランディングの大切な役割です。

龍角散に学ぶ「選択と集中」

講演では、龍角散の事例を紹介しました。

経営危機に直面した際、同社は愛用者へのアンケートを通して、「龍角散だから選んでいる」というお客様の声を再認識しました。
その結果、「のど専門企業」という軸を明確にし、「のどを守る」という価値経営資源を集中
新たな商品開発やブランド戦略につなげ、大きな成長を遂げています。

この事例から紹介されたのが、次の5つの視点です。

  • 「何を残し、何を手放すか」を決める「選択と集中」
  • 誰に価値を届けたいのかを明確にする
  • 絶対に変えてはいけない価値を定める
  • お客様から選ばれる理由を整理する
  • 今ある強みを育て続ける

新しいことを増やすだけではなく、「やめること」を決めることも重要な経営判断です。

「ないもの」を追い求めるのではなく、自社がすでに持っている価値を見つめ直し、その価値に経営資源を集中させること。
それこそが、「ない時代」の経営戦略であることが伝えられました。


第2部 デザイン編

制約からデザインがはじまる。

第二部では、青松デザインアドバイザーが登壇。
今回のお話で印象的だったのは、デザインとは、限られた条件の中で最適な方法を考えることという点でした。

予算が限られている。
時間がない。
使える素材が少ない。

こうした制約は、事業経営にも共通する課題です。
例えば、印刷物を作成するときも、ただ費用を削るのではなく、何を伝えるために、どこに力をかけるのかを考えることで
制約があっても、より効果的な発信につながります。

「ないからできない」ではなく、「今ある条件の中で、どう工夫するか」
という視点は、デザインだけでなく経営にも通じる考え方だと感じました。

引き算することで、本当に伝えたい価値が見えてくる

デザインのお話の中では、「足し算ではなく引き算」という考え方も紹介されました。
伝えたいことが多いほど、情報や装飾を増やしたくなります。

しかし、すべてを盛り込むことで、本当に届けたい価値が伝わりにくくなることもあります。
大切なのは、何を追加するかではなく、何を残すか。

これは第1部のブランディングのお話ともつながっていると感じました。
自社の魅力を伝えるためには、まず「自分たちは何を大切にしているのか」を整理することが必要なのだと思います。


パネルディスカッション

「ない時代」の経営戦略を考える

後半は、事前アンケートをもとに、ブランディング・デザイン・経営、それぞれの視点から、「ない時代」の経営戦略についてパネルディスカッションを行いました。

議論の中で共通していたのは、「制約は弱みではなく、新しい価値を生み出すきっかけにもなる」という考え方です。
京都の飲食店「佰食屋」の事例では、1日100食限定という制約を設けることで、「長く働ける飲食店」という独自のブランド価値を築いたことが紹介されました。

また、「自社には強みがない」という悩みに対しては、宇津木アドバイザーから「どんな会社にも資源はあるから、その芽を育てる」という回答がありました。
経験や技術、人とのつながり、想いなど、一見すると当たり前に思えるものも、磨くことで他社にはない強みへと育てることができると話されていました。

さらに、持続可能な経営については、「何を変えないかを決めること」が重要であるという話も印象的でした。
時代に合わせて商品やサービス、販売方法は変わっていきます。
しかし、企業が大切にする理念や価値は変えない。
その軸があるからこそ、変化の激しい時代にも柔軟に対応できるという考え方が共有されました。

質疑応答では、「『ない時代』とは何がない時代なのか」という質問も寄せられました。

これに対し、「将来を予測できる前提がなくなった時代」という考え方が示され、過去の成功事例だけでは未来を描けない今だからこそ、自社の軸や想いを持つことの重要性が語られました。


セミナーを通して

今回のセミナーでは、ブランディング・デザイン・経営という異なる視点から、「ない時代」の経営戦略についてお伝えしました。

共通していたのは、「ない」を嘆くのではなく、「ある」に目を向けること。

ブランディングでは「自社の価値を見つめ直すこと」、デザインでは「制約から価値を生み出す発想」、そしてパネルディスカッションでは「変えるものと変えないものを見極めること」が、それぞれの立場から語られました。

人手不足や物価高など、経営環境が大きく変化する今だからこそ、自社が持つ強みや価値を見つめ直し、限られた経営資源をどこへ集中させるのか。
その判断こそが、「ない時代」の経営戦略につながります。

Saya-Bizでは、事業者の皆さま一人ひとりの強みや経営資源を整理し、ブランディングやデザイン、情報発信、販路開拓など、それぞれの課題に応じた伴走支援を行っています。

「自社の強みを改めて整理したい」「今ある経営資源を活かして新たな一歩を踏み出したい」という方は、ぜひお気軽にSaya-Bizへご相談ください。